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Final Stage 第1章:突然の告白2

Author: 相沢蒼依
last update publish date: 2025-11-16 06:32:46

***

「呆れて、ものが言えないって」

ファミレスに到着するなり、向かい合った途端に言われた藤田さんの言葉が、胸に突き刺さった。

ここまでの道中、お互いに一言も口を開かなかった。

一応俺から話しかけようと試みたけど、運転しながらタバコを咥えてる藤田さんの顔が明らかに怒っていたため、どうにも話しかけられずに車内でずっと俯いていた。

きっと竜馬くんとのやり取りにイライラさせる要素があるから、怒っているんだろう。彼に抱きしめられた以外に、怒られるような何かををしただろうか? 手をニギニギされちゃったこと以外は、他にないと思うのだけれど――。

俯きながら先ほどまでの流れをいろいろ考えていると、ウェイトレスさんがにこやかな笑みを浮かべながらやって来た。

「失礼致します、ご注文を――」

「ホットコーヒーふたつ、以上っ!」

苛立ちに任せて言い放ち、さっさとウェイトレスさんを追い払う藤田さん。その声で恐るおそる顔を上げたら、バンとテーブルを拳で強く叩く。

「ちょっと、何か反応がほしいんだけど。呆れてものが言えないって言ってるんだ。ねぇ?」

「はぃ、すみません……」

ものが言えないと言い
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    *** 午後からの配送を終え、やれやれと思いながら会社に戻った竜馬の目の前に、いきなり小林が現れた。「行くぞ!」「は? えっ!?」 わけが分からないまま小林が竜馬の腕を掴み、強引に外へと連れ出す。そのまま従業員が利用している駐車場に向かって、小林が乗っている白のセダンの助手席に押し込められた。呆然とした竜馬を尻目に、何事もなかったかのように小林は運転席に座るとエンジンをかけた。「もう、いきなり何なんですか?」 車内に響くエンジン音をかき消すような竜馬の叱責に、ちょっとだけ肩を竦める。「怒るなよ、時間制限があって慌ててたんだ。それよりもお前、今日はいつもより戻りが遅かったじゃないか?」「会社のすぐそばの交差点で工事があって、片側一車線通行だったんですよ」「俺が戻ったときにはやってなかったのに。タイミングが悪いな……」 チッと舌打ちして、ハンドルを叩く。「小林さん、質問に答えてくださいよ。出会い頭でいきなりの拉致に時間制限なんて、話が全然見えません」 胸の前で両腕を組み、横目で小林を睨んでやった。そんな竜馬の視線を受け、ありありとバツの悪い顔をする。「古くからの知人に頼み込んで、ホテルのチャペルを貸し切りにしてもらった。時間は午後7時半からの20分間だけ……」「チャペルの貸し切り。手元に指輪がないというのに、これまた先走りましたね」「……用意できてるって言ったら、一緒に行ってくれるか?」 言うなりジャケットのポケットからえんじ色の小箱を出して、中が見えるように開く。そこには、ふたつの指輪が仲良く並んで光っていた。「何で用意されて……。だって出来上がりは来週末の予定だったのに」「お前が宝石店で俺に噛みついただろ。一泡吹かせてやろうと、近くにいた店員にちょっとだけ相談したんだ」「いつの間に?」「竜馬が指輪のサイズを測ってる最中、こっそりとな。その人がなんと店長さんで、一部始終を見ていた経緯も関係して俺の話に乗ってくれた」 得意げに話す小林には悪いが憐れみを感じた店長さんの計らいは竜馬にとって、あまり気持ちのいいものではなかった。それはお揃いの指輪の出来上がりを楽しみに、指折り数えて待っていたせいなのだが――「しっかし、幹線道路の片側交互通行は厳しいな。時間が間に合わないじゃないか」 手にした指輪の箱をポケットに戻し、搭載され

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